Ayase「うるさ」音源
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Ayaseは何に怒っているのか
2026年のJ-POPで、これほど露骨に怒っている曲は珍しい。
Ayaseの「うるさ」は失恋ソングではない。
社会派ソングでもない。
もっと直接的だ。
これは、
インターネットに対する怒り
である。
AyaseはこれまでYOASOBIで数多くの物語を音楽にしてきた。
主人公の気持ちを描き、
小説の世界を広げ、
時には希望を歌った。
しかし「うるさ」では違う。
主人公はいない。
物語もない。
あるのは、
Ayase自身の苛立ちだ。
そしてそれこそが、この曲を特別な作品にしている。
Ayaseとは誰なのか
今さら説明する必要もないかもしれない。
しかし「うるさ」を理解するためにはAyase自身を知る必要がある。
AyaseはYOASOBIのコンポーザーとして世界的成功を収めた人物だ。
ボカロP出身。
作曲家。
プロデューサー。
そして近年では日本を代表するヒットメーカーの一人になった。
だが今回の「うるさ」はYOASOBIではない。
Ayase個人名義だ。
しかも自身初となるセルフプロデュースEP『dialogue』からの先行曲である。
『dialogue』は、
社会。
人間関係。
自分自身。
そうしたものとの「対話」をテーマにした作品だという。
つまり「うるさ」は、
Ayaseが他人ではなく、
自分自身の言葉で初めて本気で語った曲とも言える。
『アイドル』の成功者だからこそ見えた景色
「うるさ」を聴いて最初に感じるのは、
異常なほど具体的な怒りだ。
「楽しく生きてそうだから嫌い」
「みんなで輪になってI hate you」
「目立つから悪い」
歌詞の標的は明らかだ。
SNSである。
現代のネット空間である。
そしてそこに集まる私たち自身である。
Ayaseほど成功したクリエイターは、称賛も受ける。
同時に批判も浴びる。
憶測も飛ぶ。
人格も勝手に語られる。
だからこの曲には妙なリアリティがある。
机上の社会批評ではない。
実際に浴び続けてきた人間の言葉だからだ。
「I hate you」の恐ろしさ
この曲で最も印象的なのは、何度も繰り返される
“I hate you” だ。
普通なら攻撃する側の言葉として描かれる。
しかしAyaseは少し違う。
彼が描いているのは、嫌悪そのものではなく、嫌悪がエンターテインメント化する瞬間だ。
誰かを叩く。みんなで叩く。その行為に快感を覚える。
しかも本人は正義だと思っている。
これが現代SNSの最も危険な部分だ。
歌詞に出てくる
「安心安全のI hate you」
という感覚はまさにそれを表している。
「お前のことを言ってんだ」が突き刺さる理由
後半でAyaseはこう歌う。
「時代のせいでもない」
「お前のことを言ってんだ」この一節が鋭い。
最近は何か問題が起きると、SNSのせい。
アルゴリズムのせい。
時代のせい。
そう語られがちだ。
しかしAyaseは違う。
システムの問題だけではない。
最終的に書き込んでいるのは人間だ。
悪意を放っているのも人間だ。
だから責任はある。
その視点がこの曲の核心にある。
音楽的にはAyase史上もっとも攻撃的
「うるさ」はサウンド面でも面白い。
公式には
「ダンサブルなエレクトロチューン」
として紹介されている。
しかし実際はかなり異質だ。
キャッチーなメロディ。
クラブミュージック的なビート。
そこへ不穏な歌詞が乗る。
普通なら明るい曲に聞こえる。
なのに内容は集団リンチの話。
このギャップが怖い。
まるでSNSそのものだ。
楽しそうに見える。
でも中では誰かが傷ついている。
「記号」という言葉に込められた絶望
個人的に最も重要だと思うのは、
「だって人ではないの/ただの記号」
という部分だ。
SNS上では、
相手の顔が見えない。
生活も見えない。
家族も見えない。
だから人ではなくなる。
アカウントになる。
アイコンになる。
記号になる。
すると攻撃しやすくなる。
Ayaseが本当に怖がっているのは、
炎上ではない。
人間が人間を人間として見なくなることだ。
最後に「I love you」を置いた意味
そして最後。
Ayaseは
「I hate you」
で終わらない。
「ねえ どうせなら I love you」
で曲を閉じる。
ここがこの曲の救いだ。
もし最後まで怒りだけだったら、
単なる批判ソングになる。
しかしAyaseは願っている。
どうせ言葉を投げるなら。
どうせ誰かに届くなら。
憎しみではなく、
愛を選べないかと。
だから「うるさ」は怒りの歌ではある。
でも本質的には、
コミュニケーションの歌だ。
『dialogue』というタイトルが示すもの
Ayaseは今回のEPについて、
自分自身や社会との「対話」をテーマにした作品だと語っている。
その中で「うるさ」は最も攻撃的な曲だ。
だが同時に最も対話を求めている曲でもある。
なぜなら怒りとは、
本当は分かってほしいという感情の裏返しだからだ。
Ayaseはこの曲で、
ネット社会を否定しているわけではない。
人を否定しているわけでもない。
ただ言っている。
少し静かにしてくれ。
少し考えてくれ。
その言葉は、
YOASOBIとして世界の頂点近くまで登った作曲家だからこそ持てる重みを持っている。
そして2026年の今、
「うるさ」がこれほど刺さるのは、
私たち全員が一度は誰かに向かって、
あるいは誰かから向けられて、
“I hate you”
を経験しているからなのかもしれない。
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